「膝関節症」について
こんなことはありませんか?
ヒアルロン酸注射で膝の痛みが緩和されている実感がない
現在、ヒアルロン酸注射を打つために定期的に通院しているけれど、ヒアルロン酸による膝の痛みの改善には個人差があると言われている通り、自分には目立った改善は見られない。
膝痛が悪化し、高位脛骨骨切り術や人工膝関節置換術などの手術療法を受けようか悩んでいる
今までは服薬や他の治療法を試みていたが、最近になって膝の痛みが悪化。手術をすれば症状が改善されるだろうことはわかるけれど、手術をするのは正直怖い。
長期入院することができず、手術を受けることができない
膝痛を改善するために高位脛骨骨切り術・人工膝関節置換術などの手術療法を受けることを検討しているが、そのためには数週間〜1ヶ月ほどの入院が必要。しかしながら、仕事や家事、介護などの都合もあり、長期入院にはなかなか踏み出せない。
自分の希望に沿った治療法を提案してくれる医療機関を探している
ずっと付き合っていかなければならない病気だからこそ、希望や社会背景を理解した上で、適した治療法を積極的に提案してくれる先生に治療をしてもらいたい。
手術を勧められたが、受けるのはなんとなく怖い
信頼している先生から、手術を進めてもらった。丁寧に説明をしてもらい、手術の特徴を理解することはできたけれど、やはり自分の身体にメスを入れるのはなんとなく不安。できれば、手術以外の選択肢がないかと考えている。
大好きなスポーツを続けたい
信頼している先生から、手術を勧めてもらった。手術をすると、大好きなスポーツに制限がかかってしまうこともあると聞いて、悩んでいる。
そもそも、「膝関節症」が
起こる原因とは?
クッションのような役割を果たす軟骨がすりへってしまっているから。
膝関節は、太ももの骨(大腿骨)・すねの骨(脛骨)・ひざの皿(膝蓋骨)から構成される関節で、それぞれの表面は弾力性のある軟骨に覆われています。軟骨は、骨同士の摩擦を防ぎ、スムーズに関節を動かしたり、体重がかかった際の衝撃を和らげるクッションのような役割を果たしたりしています。歩行時には体重の約3倍の負荷が膝関節にかかると言われていますが、それでも膝の痛みを感じず滑らかに動くのは、軟骨があるからです。
「膝関節症」の痛みの原因は、「炎症」
軟骨は加齢や体重の増加、怪我などにより、徐々にすり減ってしまいます。しかし、軟骨や骨には神経が通っていないので、軟骨が削れることや、骨同士が直接ぶつかってしまうことで膝の痛みが発生するわけではありません。軟骨がすり減った際に出る摩擦片によって、関節内で炎症が起こることが「膝関節症」の痛みの原因です。炎症が続くと、軟骨が摩耗するだけでなく、骨が固くなったり、変形したりして、さらに膝痛が悪化します。
「膝関節症」の
治療方法とは?
「膝関節症」の
治療方法の今と昔
一度すり減ってしまった軟骨が元に戻ることはほぼありません。そのため、「膝関節症」の治療は、服薬により膝痛を抑えたり、軟骨の主成分であるヒアルロン酸を直接関節内に注入し、関節の動きをスムーズにしたりするなど、対症療法が主となります。抜本的に症状を改善するのであれば、脚の形をO脚からX脚に矯正する高位脛骨骨切り術・膝関節自体を人工のものに切り替える人工膝関節置換術などの手術療法が一般的です。現在ではこれらに加えて、血液や細胞の自己修復機能に期待するバイオセラピーが、膝の痛みに対する治療における選択肢として選ばれることも増えてきています。
従来の治療方法
対症療法
薬物療法
消炎鎮痛薬などの内服や外用薬の処方や、ヒアルロン酸やステロイドを直接膝関節に注射します。
物理療法
温熱や電気機器の刺激といった物理的手段で、消炎鎮痛や軟部組織の柔軟性改善を図ります。
装具療法
膝の変形によって不安定になってしまった膝支持性の補強や、膝関節への負担を減少するために装具を使用します。
運動療法
大腿四頭筋など膝関節周囲の筋肉を筋肉トレーニングで鍛える治療法です。ひざ関節の負担要因(血流や体重)を改善することを目指します。
保険適応で治療が受けられますが、継続的に治療を受ける必要があります。
手術療法
高位脛骨骨切り術
脚の形をO脚からX脚に矯正し、荷重を膝関節の外側に移す。
人工関節置換手術
膝関節を取り除き、膝関節の損傷した部位を取り除き、金属やポリエチレンでできた人工の関節に取り換える。
関節鏡視下手術
関節鏡を挿入しながら炎症の原因となる滑膜や変性して損傷した半月板を切除し、関節内の清掃をする手術です。変形を遅らせることが主な目的で行われます。
<高位脛骨骨切り術>自分の関節を温存できますが、骨が癒合するまで時間を要し、3~4週間の入院の必要があります。
<人工膝関節置換術>大幅な痛みの改善と歩行回復が期待できますが、人工物ゆえの寿命があります。
<関節鏡視下手術>病期が進行している場合では適応にならないことも多いです。
上記に次ぐ第3の選択肢となりうる治療方法
バイオセラピー
PRP治療
様々な働きを持つ血小板由来の成長因子・サイトカインを膝関節に注射し、自然治癒能力を高める。
培養幹細胞治療
抗炎症作用と痛みの緩和が期待できる幹細胞を培養・増殖させ、膝関節に注射
症状にあわせた「治療の選択肢」
今注目される
「膝関節症」治療における
「バイオセラピー」とは?
膝関節症の第3の選択肢、自己由来の成分を用いた治療法
すり減ってしまった軟骨が自然と元に戻ることはないため、人工関節を入れる以外で『膝関節症』の根治は難しいと考えられてきました。しかしながら昨今、患者さん本人の血液や幹細胞などを体外で加工し、再び体内に移植することで、病気やケガの治癒を目指すバイオセラピーが目覚ましい発展を遂げており、膝関節症の治療においても高い効果が期待されています。その主な治療方法が、血小板由来の成分を活用したPRP治療と幹細胞を活用した培養幹細胞治療です。
PRP治療
血小板の自己治癒力を活かした治療法です。患者自身の血液から血小板を抽出し、濃縮したPRP(多血小板血漿)を作成します。このPRPには、成長因子・サイトカインが多く含まれており、膝関節に注入することで、活発な細胞分裂を促し、長期的な抗炎症効果や組織の修復効果が期待されます。
培養幹細胞治療
抗炎症効果や体内で鎮痛効果のある物質を産生することが期待される幹細胞を患者さん自身の脂肪組織から採取し、培養・増殖させ、再び膝関節に注入する治療法です。培養幹細胞の投入により、軟骨の厚みが増したという症例も確認されており、軟骨を修復する働きの有無など様々な研究が進められています。
特に今、関節の炎症を抑え、
鎮痛効果の元になる物質を
作ることが
期待される
「バイオセラピー」が注目を集めています。
「PRP治療」の主な流れ
1
採血
問診・診察で痛みやこれまでの治療についてお伺いした後に、約50mlの血液を採取します。
2
加工
厚生労働省による許認可を取得した環境下で、患者さんの血液を加工します。
3
注射
注射で患部に注入します。
入院不要で治療後はすぐにご帰宅いただけます。
4
経過観察
日常生活を送っていただけます。持続的効果が期待できます。(効果の実感は、患者さんにより異なります)
「培養幹細胞治療」の
主な流れ
1
問診・診察
問診・診察で痛みやこれまでの治療についてお伺いした後に脂肪採取手術の日程を予約します。
2
脂肪採取
局所麻酔でわずか約20mlの脂肪を採取します。施術にかかるお時間は1時間ほどです。
3
加工
厚生労働省の許認可環境下患者さんの脂肪から幹細胞を抽出・培養します。
4
注入
注射で患部に注入します。入院不要で治療後はすぐにご帰宅いただけます。
5
経過観察
持続的効果がみられた報告例もあります。(1)
(1)Dai WL ,et al.,Arthroscopy.
2017 Mar;33(3):659-670.
「バイオセラピー」が
注目されている理由
「抗炎症作用」の働きにより膝の痛みの改善が期待できる
血小板にはサイトカインと呼ばれる炎症を抑えるタンパク質が含まれています。そのため、血小板を多く含んだPRPを膝関節に注入することで、『膝関節症』における抗炎症効果が期待されています。さらに、血小板には多数の成長因子・サイトカインが含まれており、その中には皮膚や骨、軟骨などの組織の修復において重要な役割を果たすコラーゲンを新しく作り出す作用もあるため、組織の再生効果も期待されています。
患者さん由来の組織を加工するため、アレルギーや拒絶反応等のリスクが少ない
PRP、培養幹細胞は患者さん由来の自己組織から作製されるため、アレルギーや拒絶反応等のリスクは低いと考えられています。
手術には、少なからず合併症のリスクも付きまといます。人工由来の成分を注入するヒアルロン酸注射についても、アレルギーや副作用が起こる可能性は0ではありません。
PRPや培養幹細胞は、自己組織から加工作製されるため、注入することでのアレルギー等の副作用をできる限り回避できると考えられています。
手術を避け、早期回復を目指すプロアスリートに選ばれる治療法
「PRP治療」は一度の採血と、その後の膝関節への注射で治療が完結するため、入院や手術、リハビリなどの必要はありません。治療後はすぐにいつも通りの生活をしても問題はありません。また、PRPにより細胞の自己修復機能が活性化するのは注入後約1カ月間ですが、その間に組織が修復すれば、その後の持続的効果も期待できます。何度も通院するのが難しいご事情をお持ちの患者さんにお薦めの治療法です。
手術を避け、早期回復を目指すプロアスリートに選ばれる治療法
欧米におけるスポーツ医療では、組織修復するための手段として「PRP治療」が行われてきました。手術でメスを入れることをせずに元の状態に戻し、少しでも早い復帰を望むサッカー選手やメジャーリーガーなどプロアスリートの多くが「PRP治療」を行っています。
痛み抑制物質の産生により膝の痛みの改善が期待できる
培養幹細胞には抗炎症作用と痛み抑制物質の産生能があると考えられておりま、関節内の炎症を抑え、鎮痛効果の元になる物質を作ることができることが期待されております。実際、培養幹細胞の注入によって、ひざの痛みが緩和されたことを報告する医学論文もあります。
出典:Pers YM,et al.:Stem Cells Trans Med 5:847-56,2016
痛みの改善に加えて、軟骨組織を修復する効果も期待されている
培養幹細胞の投与によって膝の軟骨組織が厚くなったという症例が確認されています。
まだまだデータが不十分ですが、培養幹細胞と培養幹細胞が産出するサイトカインや成長因子が、損傷した組織の修復を行うと考えられています。
培養幹細胞を患部に投与すると、細胞が集まってきたり、足場と呼ばれる立体構造の基礎となるものが作られるなど、新しく組織を作る上で必要なものが患部に集まります。
出典:Pers YM,et al.:Stem Cells Trans Med 5:847-56,2016
「バイオセラピー」はこんな方におすすめです。
服薬やヒアルロン酸注射では膝の痛みが改善されなかった患者さん
一度の治療で効果を持続させたい
手術に抵抗がある
人工関節をいれることに抵抗がある
人工透析をやっているので人工関節手術による合併症のリスクがある
高齢により、人工関節手術ができない
仕事や家事、介護などの理由で長期入院ができない
「バイオセラピー」をする際の
医療機関選びのポイント
よりよい治療を追及するため、新しい技術や治療法を取り入れている医療機関
「バイオセラピー」は近年目覚ましい発展を遂げている再生医療のひとつです。しかしながら、行える医療機関はまだ限られており、膝関節症の治療においても、ヒアルロン酸注射や高位脛骨骨切り術・人工関節手術に比べ、受けられる医療機関は少ないのが現状です。再生医療をはじめ、新たな治療法への勉強や研究に情熱を注ぎ、良いものは積極的に取り入れているかどうかも、医療機関選びのポイントです。
患者さんの状態を見極め、それぞれに合った治療法を考えてくれる医療機関
膝関節症の新たな治療法として注目を集めるバイオセラピーですが、誰に対しても万能というわけではありません。バイオセラピーで改善が見込める人、ヒアルロン酸注射で効果を感じる人、高位脛骨骨切り術や人工関節手術の必要がある人など、適した治療法はぞれぞれです。バイオセラピーを選択しないことを含めて、患者さんの状態を踏まえて総合的に判断し、適した治療法を提案してくれる医療機関を選ぶことがお薦めです。
ドクター紹介
中村憲正
再生医療部門 顧問
大阪保健医療大学教授
大阪大学国際医工情報センター招聘教授
関節軟骨の再生医療の第一人者です。
国際軟骨修復学会では理事長も務められ、日本のみならず世界の軟骨の再生医療の治療、研究を牽引するパイニア的存在です。
最新の科学的な知見を元にアドバイスを受け、当院でも最高水準の軟骨再生医療がおこなっていけるものと確信しております。
経歴
大阪大学医学部卒業 整形外科入局
大阪大学医学部大学院博士課程修了 医学博士
Calgary大学 (Canada) Post-Doctoral Research Fellow
大阪大学整形外科講師
北海道大学客員教授 大学院医学研究科整形外科 併任北京大学(中国)客員教授 スポーツ医科学 併任
大阪保健医療大学教授 保健医療学部
大阪大学招聘教授 国際医工情報センター
役職
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会 (JOSKAS) 評議員
国際軟骨修復学会(ICRS)前理事長
国際関節鏡・膝外科・スポーツ整形外科学会(ISAKOS)科学委員会 前委員長
厚生労働省 次世代医療機器評価指標作成事業 再生医療審査WG 前座長、委員
経済産業省 医療機器開発ガイドライン 委員
日本学術振興会 科学研究費委員会専門委員
日本軟骨代謝学会 評議員
日本再生医療学会 評議員
日本オリンピック委員会 強化スタッフ
日本ゴルフ協会 医科学委員会 委員
日本社会人アメリカンフットボール協会 アサヒ飲料チャレンジャーズ チームドクター
中山 寛
再生医療部門 統括医師
兵庫医科大学 整形外科 医局長/講師
膝関節治療のスペシャリストであり、特に膝周囲の骨切り術の理論や技術では日本のトップレベルです。
多くの特に日常活動性の高い患者様を最終手段である人工関節になることから救っています。
整形外科医を対象とした手術のインストラクターや講演を多数こなすスーパードクターです。
経歴
兵庫医科大学 卒業 整形外科入局
兵庫医科大学 整形外科 助教
ドイツ Tübingen大学留学
兵庫医科大学 整形外科 医局長
兵庫医療大学 非常勤講師
兵庫医科大学 整形外科 講師
役職
JOSKAS(日本関節鏡膝スポーツ整形外科学会)評議員
日本 Knee osteotomyフォーラム世話人、広報委員、法務委員
関西Knee osteotomy研究会世話人
兵庫県膝関節研究会世話人
オリンパステルモバイオマテリアル(株)テクニカルアドバイザー
AO Davos knee master course faculty
JOSKASカダバーセミナー、膝周囲骨切り術講師
Around the knee osteotomy education courseカダバー講師
Olympus Telmo Learning center認定医師
Depuy Synthes Visitation center認定医師
井石智也
再生医療部実施医師、情報管理責任者
兵庫医科大学 整形外科 助教
再生医療部門 実施医師
ピッツバーグ大学から帰国して間もないですが、大学病院では再生医療の研究、膝関節の治療の中心的存在です。
世界の最高峰の学会での受賞歴を持ち、臨床での活躍はもちろん、今後の基礎研究の成果も軟骨再生医療の発展に大きく寄与すると思います。
経歴
兵庫医科大学 卒業 整形外科入局
兵庫医科大学 整形外科 病院助教
ピッツバーグ大学整形外科Center for Cellular and Molecular Engineering 客員研究員
兵庫医科大学附属病院整形外科 助教
受賞歴
ジョン・J・ジョイス賞(第1位):
ISAKOS John J. Joyce Award First Place. 12th Biennial ISAKOS Congress. “Absence Of Ligament
Progenitor Cells In The Pediatric Knee Anterolateral Complex”.
ジャン・ジルクイスト科学研究賞(ファイナリスト):
ISAKOS Jan I. Gillquist Scientific Research Award Finalist. 12th Biennial ISAKOS Congress.
“Platelet-Rich Plasma In Combination With Adipose Stem Cells Encapsulated In
Three-Dimensional Hydrogel In A Rabbit Model Of Cartilage Repair”
治療について
PRP治療
・初診料:3,000円
・PFC-FD™を用いた治療における施術料 180,000円
・PRPを用いた治療(GPSⅢキット使用)における施術料 100,000円
・濃縮PRPを用いた治療(APSキット使用)における施術料 300,000円
ご不明な点は医師・スタッフにお尋ねください。
なお一回の施術あたりの費用は、患部の状態を確認した医師の判断、PRPの円心回数等により変更となる場合がございます。
脂肪組織由来幹細胞(ASC)治療
1部位(片側):1190,000円
2部位(両側):1390,000円
- 税抜き価格で表記しております。
よくある質問
- 治療に要する時間はどれくらいですか?
- 基本的には検体(血液or脂肪)を採取する1回と、注射で患部に注入する2回の通院で治療は完了します。入院の必要はありません。採取から加工し、注入するまでは3〜6週間ほどを必要とします。詳しくは医師にご相談ください。
- 効果はどの程度持続しますか?
- 治療中に痛みは伴いますか?
- 保険診療が適応されるのでしょうか?
- 安全性は問題がないのでしょうか?